木曽駒ヶ岳登山
(2009.09.21〜09.22)

秋のシルバーウィークにどこか手頃なところで暇をつぶそうと木曽駒ヶ岳(2,956.3m)へ登ってきた。
 ご存じのように、駒ヶ岳へのアプローチは、駒ヶ根の菅の台から標高2,611.5mの千畳敷まで、バスとロープウェイが運んでくれる。駒ヶ根までは高速で3時間半位なので、こちらを早朝発ならゆっくり登っても正午過ぎには頂上でくつろげる。ランチとコーヒーをいただきながら、中央アルプスの峰々をしこたま撮るなんて最高に幸せだ。復路は宝剣岳〜極楽平〜千畳敷とオーソドックスなルートだ。ハイキング気分で3,000m級の山が満喫できるのはとてもいい。
 と、安易に考えていたのだが、朝8時過ぎに菅の台バスセンターの駐車場辺りへ来るとどうも様子がおかしい。異様な数の車がある。Pの矢印と係の人の誘導で、かなり遠い駐車場へまわされた。ふと案内板を見ると「ロープウェイ待ち時間1時間30分」
「え"〜!まぁ仕方がないか、日程的には十分すぎる余裕があるのだから・・・。」ザックを出して靴を履き替え準備も整いバス停までが山行のスタートだ。(その間に待ち時間は2時間になっていた。)
 ところがバス停に着いたらこれまたすごい人。バスを待つだけでも1時間ぐらいはかかりそうだ。しばらくすると係員が「現在ロープウェイ待ち時間は3時間です。乗車を取りやめられる方は払い戻しいたします。」一瞬何を言っているんだろうと思った。でも相当な人数が列を離れていった。私も、ここをあきらめて、別の山に登ろうか、ほかに近くの高原でのんびりするのも悪くないかなぁ〜、なんて考えたりもした。このとき時刻は朝の9時。でも、待ち3時間、プラス登山2時間で午後2時過ぎには登頂できる、なんて気楽に考えていた。

久々に行列に並んだ事もあって、近くに居る人たちの「人間ウォッチング」が始まった。おしゃれなハットをかぶった50代半ばの夫婦らしき二人連れ。恰幅のいいご主人の首からは、一目で年代物とわかる一眼レフがぶら下がっている(シブイ)。前へ回り込んで覗くのは失礼だし、気軽に声を掛けるのは少々不安だ。飾りっ気のないストラップのパッドの部分で「Canon製」であると想像できた。しばらく観察していると見え隠れするボディーの軍幹部からAシリーズだと確信した。特徴のある巻き上げレバーのプラスチック。ペンタ頭頂部のアクセサリーシュー。シャッタースピード調整ダイアル。キャノンAE−1(白)だ。レンズはニユーFD 35-105/3.5。すごく綺麗だ。
 AE−1は1976年に発売が開始され、初めてカメラの露出制御にマイクロコンピュータを搭載し、なおかつ価格がリーズナブルだったので爆発的に売れ、キヤノンの名を世界に知らしめたカメラと言ってもいい。
 勝手に想像すると、この紳士はおそらく30年程前、新婚旅行を機に念願の一眼レフAE−1を手に入れ、旅行や家族達の記録写真を撮るために多くのフィルムを通したことだろう。もしかしたら、仕事に使ったこともあるかもしれない。
 今回は、6月頃に一番下の娘が嫁ぎ、急に家の中が寂しくなり、会話の途絶えがちな夫婦が思い出の地に訪れ、将来を見つめ直しに来たのだろう。
 しかしなぜ今AE−1なのか?このご時世、あか抜けていないご婦人連中でもコンパクトなデジカメの時代だというのに・・・。70年代中頃のカメラ小僧ならFD50/1.8でOKだが、この紳士は標準系ズームをつけているところを見ると、少し前の中古カメラブームで火がつき、他にも機械式カメラを何台か買い求めたに違いない。趣味も度が過ぎると高価な物に手を出してしまうのだが、AE−1あたりを使っているのは極めて堅実だ。でも、オイルスムースレザーのショルダーバッグの中には広角レンズも入っていることだろう。

午前10時30分「しらび平」着。ロープウェイ駅周辺にあふれる人に驚いた。渡された整理券でロープウェイに乗れるのは午後2時とのこと。それまで待っていなければならない。バス待ちから通算すると5時間30分!完全に舐めてかかった私の負けだ。14〜5年前に来たときは、それ程待たされた記憶はないので、紅葉前でも連休だから1時間程度は覚悟していたが、ここまですごいとは予想すらしなかった。臨時郵便局のスタッフによると「長い間ここでやっているけど、こんなに待ち時間が出たのは初めてですよ!」と語っていた。「ディズニーシーの海底2万マイル」でも2時間くらいだ。ただ、呼び出しの整理券番号さえ聞こえる所なら、ずっと並んでいなくてもいいのがせめてもの救いだ。散歩をしたり、昼寝をしたり、何でもできる。
 不安や問題は時間が解決してくれる。千畳敷に辿り着いたのは午後2時を少しまわっていた。オンシーズンならとても綺麗だろう千畳敷カールを乗越浄土へとさっそうと登り、宝剣山荘から右手へ中岳へと進む。少し危険な巻き道を経由し、休憩らしい休憩も取らずに、駒ヶ岳に着いたのは午後4時になっていた。にわかにガスが立ちこめ視界が悪くなり、半袖シャツでは幾分寒い。今回は頂上直下の木曽小屋で泊まることにした。
 部屋に荷物を置き、小屋近くで夕日を見ながらまどろんだ。眼下には先日見た映画「火天の城」に出てきた上松(あげまつ)が見える。宮番匠、岡部又右衛門(西田敏行)が織田信長(椎名桔平)に命ぜられ安土城を築城するために理想の木曽檜を求めにやってきたのが上松だ。しばし映画のシーンを思い出しながら、当時を偲び彼らの生き様や志に再び感動に浸っていた。
 翌日は天候も悪く、おまけにメンバーの一人が早朝から体調不良をうったえたので、山の余韻に浸ることもなく一気に降りてしまった。
 下山後のお風呂は、信州駒ヶ根高原家族旅行村アルプスの丘露天こぶしの湯でいただいた。施設内にはレストランやバーベキュー炉、
レクリエーション施設などがあり、十分な時間があればのんびりくつろぎたいところだ。
 

 

TOPへ