南八ヶ岳登山2008

年末年始(12/29〜01/01)に恒例の南八ヶ岳に登った。事前に行程や食糧計画の打合会を2度も行った割にはアバウトな計画で、隊員には時間やコースの詳細をまとめた計画書すら提示しなかった。まぁ、南八ヶ岳にはもう何度も登っているし、「あそこからダーって登って、こっちに下りればいいな!」的な会話で充分理解できるだろうと思っているからだ。今回こそ(常時活動している)フルメンバーでの山行を期待したが、体調不良と友人等との友好を重視した隊員と、家庭の事情に併せ体力不足を懸念して辞退した隊員を除く3人での山行となった。年末年始の天候の悪化を予報で確認しながらも、アプローチの地形やエスケープルートも比較的容易なので決行を決めた。肝心の写真撮影は到底期待できそうにないので、機材は大判をあきらめコンパクトなデジカメをポケットに入れただけだ。

諏訪ICから美濃戸へ向かう道が毎回違うのには笑いが出てしまう。また帰りの道も同じ道を通ったことがない。安易に方角だけの勘に頼って運転しているからだろう。それはそれでおもしろいのだけれど、いつだったかナビ付の車で出かけたにもかかわらず、えらく遠回りをさせられたのには情けなかった。今回はいい加減ちゃんとした道案内ができるようにと「ルートまっぷ」をプリントして持参した。完璧だ。

30日午前9時 美濃戸山荘出発 南沢ルートを行者小屋へと向かった。3時間30分超と結構時間がかかった。別にスピードを競うわけではないけれど、天候と日没を考えるとあまりゆっくりしてはいられない。登山届を出した美濃戸口のダンナにも「早めに登った方がいいですよ。」みたいなことを言われたし・・・。昼食は自炊の予定をしていたが、午後1時になろうとしていたので、急遽「行者小屋」のメニュー(牛丼800円)を選択した。これだけでも相当お腹がいっぱいになるけれど、それでも持参した辛子マヨネーズを付けたバターロールに生ハムを挟んでカロリーを上げた。
 午後1時55分行者小屋を出発。地蔵尾根の登りだ。急登が続き樹林帯を過ぎる頃は風速25m/秒位はあっただろうかかなりの強風になっていた。1体目の地蔵の所まできた時には小屋が近いと確信しとてもうれしかった。しかし段々とトレースが分かりにくくなり10m程登った所で、「おかしい、道を間違えた!」と感じた。視界が数m程しかなくおまけに曇った度付のゴーグルでは周囲を確認できない。隊員1も私が困惑している事態に気がついた様子だ。そうこうしているうちに、SLが「何してるんや!」というような意味合いの言葉を発した。状況を説明したところ、直登しろと促され一旦は前進したものの、なお視界は悪く尾根の尖っている部分をピーク部と思い込んでしまった。一瞬視界が開け、岩場に取り付けられている鎖が見えた時に、一度戻り左に巻いて登った方が安全と思ったりもした。グズグズしているとSLは今までのペースが嘘のようにものすごい勢いで登りだした。ナイフエッジが雪庇で覆われている所も1歩1歩慎重に踏破して行った。大胆な行動だと少し心配したが、案ずるより産むが易しのごとく結果はオーライ、無事地蔵の頭まで登ってこれた。ココまでくれば小屋は目と鼻の先、強風に飛ばされないように這うように進んで行くことにした。普段は足や膝の不調を訴え、とにかく出だしがスローなSLもピンチの時はすごく頼れるメンバーだと確信した。後から思い出すとこれくらいで退避を考え、怖じ気づいた私が何とも情けない。でも、万が一のことを考えるとゾッとする。北アの槍平付近で雪崩に遭い遭難!なんてニュースを聞くと、明日は我が身、他人事ではない。

赤岳天望荘に到着したのは予定をちょうど1時間遅れの4時30分になっていた。小屋に入ると支配人から素っ気ない言葉で案内され、精神的な疲労と安堵感の入り交じった状態でも少し気分を害したのは私だけだろうか。歓迎のお汁粉を戴き暖を取りブツブツ文句を言ったくらいだ。しかしチェックインの時わざと昨年のエピソードなどを話すと社交辞令かも知れないが段々と優しく応対してくれた。おまけに宿泊客が少ないので全員個室で料金は1人プラス500円でいいと言うのだ。えらく気前が良い。フリードリンク用のカップに名前を書き早速荷物を運んで夕食までのひとときを談話室で過ごした。
 今夜は小屋の夕食を戴く。以前より気になっていた山小屋のバイキングだ。好きな物をたくさん食べられるし、このような形態の小屋は他に聞いたことがない。しかし見事に期待を裏切られた。メニューが質素(山菜の水煮?、玉子焼き、ウインナーのロールキャベツ風、杏仁豆腐・・・)なうえにご飯が不味い。多かれ少なかれ物資の搬入が困難な小屋では保存食や冷凍食品が多用されるので仕方がないことではあるが、私は登攀中のこともあり一気に食欲が失せた。唯一チキン入りのカレー汁が許せたが、他のメンバーはどうだったのだろう。ワインが進まないことを考えると同様の思いに違いない。さらに食器が発泡スチロールの仕切り容器とは許せない。毎回私が炊くご飯がいかに美味しいかがこの時話題になった。自画自賛ではあるが、もちろん南条産コシヒカリ100%で、豊富な経験から培った知識に加え、充分な吸水と科学的根拠に基づいた微妙な火力調整がなせる業だろう。仲間の好みを差し引いても私は少し鼻が高くなった。よく食は目に言うとも五感で食べるとも言う。品のある陶器や銀食器とまでは言わないが、せめてコレールやメラミンのボウルやプレートで戴きたい。アウトドアでは、コッフェルとシェラカップ、多徳ナイフでワイルドに食べる方が正統派かも知れないが、だったらフリーズドライやレトルト食品でいいだろう。
 夜半になると日中にも増して風が強くなってきた。マイナス19度と気温もかなり低く夜中は相当寒いので、談話室のストーブは消さなくていいとのこと。また、寝具をキチンと片付けるならそこで寝ることも許可してくれた。お世辞にも快適とは言わないが、狭く寒い個室で凍えるよりは雲泥の差である。それと禁煙が半ば当たり前となっている山小屋だが、ここは食堂も談話室も喫煙OK!だ。私たちにとってはこれだけでも充分である。

翌31日の朝もかなりの強風で、支配人からは「戒厳令」が出された。当初の計画では赤岳を越え、中岳〜阿弥陀岳を周遊して赤岳鉱泉でお年越しを予定していたが、停滞を余儀なくされた。無線連絡をする支配人の「昨日からの宿泊者12名、本日の宿泊確定!」との声も漏れ聞こえてきたりもした。途方に暮れ談話室のストーブの側に陣取り「関西」の熱燗を戴きながらやるせない時間を過ごした。山のビデオの視聴に飽きたので、リアルタイムでTV番組を視た。指揮者岩城宏之のドキュメンタリー「ベートーヴェン全交響曲フルマラソン」しかしなんで山でオーケストラなのか・・・。ついでにココのテレビはケーブルテレビかも知れないほど画質が綺麗で、こんな天候でもチラつきやゴーストが出ない。どうなっているのだろう。
 午前11時過ぎに一旦「戒厳令」が解かれた。下からの登山者も次々と登ってきた。移動するなら今しかない。隊員1は帰着の日時を気にしてかすぐ出発しようと思われる様子だった。しかしSLは既にもう一泊逗留すると決定したので充分リラックスしていた。私としては赤岳鉱泉に予約を入れた手前できれば下りたかったが、天望荘の年越しイベントも気になっていて「どうする?」嫌な空気ではないが、しばしお互いに顔色を窺っていた。結局、小屋の振る舞いを期待して留まることにした。折しも支配人の「○○さんはドボンですね。」と名指しで言われ確定した。お昼にカレーうどんが振る舞われ、自炊の機会をまたも失い、ゆっくり午後のひとときを、飲みながら語りながらダラダラと過ごすのはとてももったいないと思いつつも、こんな所まできてこんな時間を過ごすのも悪くないなぁなんて思ったりもした。
 受付で「今夜の夕食メニューはオススメですよ!」と勧められたが時間がきたので、やっと計画どおり自炊の準備を始めた。ところがイベントの準備があるので午後6時30分までに食事を終えて場所を空けてほしいと指示があった。「ひぇ〜!1時間しかない!」今夜は大好きな「サイコロステーキ」&「カニすき」&「カルパッチョ風サラダ」なのに・・・。尻を追われるように焦りまくりながらの食事だった。ゆっくり味わう暇もなく流し込んだといった感がある。ついでに予想外なことはSLのストーブ(OPTIMUS NOVA+)の火力が安定せず役目が果たせなかったことだ。充分なプレヒートで問題は解決すると思われるものの2年続きの不幸は呪われているのかも知れない。

この小屋の大晦日は「振舞酒」と「大ジャンケン大会」が恒例となっているようだ。お酒の種類も「焼酎」「日本酒」「ワイン(赤・白)」とそれなりに充実している。今年は50名ほどが参加した。ジャンケン大会の景品は、ショートスパッツや15リットル程度のサブザック等々、参加費とスポンサーで行われる赤岳鉱泉のビンゴ大会とは違い、これといって欲しい物はなかったが「無料宿泊券」(8,500円相当)は魅力的だ。隊員1は「革製の水筒」SLは「個室無料券」をゲットしたのに・・・このとき私はジャンケンが弱いと知った。何も貰えない人にはグループ店で使える「ドリンク券」が渡された。結局淡々と進められるイベントが終わり、食堂を追い出され引き続き談話室で飲み続けることになる。相席した山が好きで山梨県に移り住んだという45歳の男性と自然の調査研究を将来の職業としたいという大学生。加えて東京都葛飾区からきたという伝統工芸師とその会社の事務方。そして私たち3人。持参の珍味や嗜好品を披露しながら宴会は年明けまで続いた。その間食堂のラックに並んでいたワイン(有料)は全て私たちの胃袋に吸い込まれてしまった。(翌朝にはしっかり補充されていた。)

山に登る目的は各人いろいろだと思うが、山小屋で知り合った人達との語らいも一つの楽しみだ。話題としては今までの武勇伝や山に対する哲学を語る者、地方の紹介や山に関する失敗談など普段の会話にちょっぴり山のスパイスが多めといった具合だ。ちょっと生意気に慢話をする輩もいたりする。そうかといって登山者全ての人と意気投合しお酒を酌み交わすわけではなく、中には気に障るくらい横着な老人や、相当の面積を専有して居眠りをする他人の迷惑を顧みない婦人には全く閉口してしまう。(ひょっとして私達が周りから怪訝そうに思われていたりして???)「また来年会いましょう!」と約束をし深い眠りについた。

 明けて元日も相当の風力だったが、一昨日難儀をした地蔵尾根を一気に下り降りた。アイゼンを両方とも岩に引っかけて顔面から倒れ込んだり、アイゼンを外した瞬間スリップし1回転するなど疲れ(二日酔い)が足にきていた。それでも余裕で美濃戸山荘まで下りることができ帰途についた。途中おなじみの八ヶ岳山荘でお風呂(最近女性客が多いのか浴室の男女が入れ替わっていた。)に入り肉々と口ずさみながら諏訪市内で遅い昼食を摂った。
 高速では所々チェーン規制や除雪作業のための低速作業車のせいか渋滞が発生し、ガス欠を恐れながらトロトロ帰ってきた。今庄ICの駐車場にデポしておいた隊員1の車は50cm程の雪で覆われ、除雪隊員等の手をわずらわせながら救出したのは午後10時になっていた。反省会は後日と言うことでこの日は解散した。

今回学習したこと。@スニッカーズピーナッツは寒さで堅くなり歯が立たない。A味付カズノコは柔らかくて不味い。B山で携帯電話はFomaよりau。C雪道のドライブは早めに給油をする。Dアイゼンを外した1歩目は慎重に!ってなところかな。ふぅ〜。

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